ワタシは屋上の柵に捕まった。


「…はぁはぁ…」


何、今の…。

時間が止まったみたい。

まだ、拓真の感触が残ってる。

息が出来なかった。

拓真が近すぎて。

心臓がドキドキしてる。

ワタシ…、拓真のこと、いつの間に、こんなに好きになってたのかなぁ…?

嫌いになろうとしてたじゃん。

咲子の彼氏だ、って何度も何度も言い聞かせててさぁ。


「…どうして…っ…?」


拓真の嫌なところを見つけようとしてたら、良いところを見つけちゃう。

拓真に嫌われようとしてたら、それが怖くて近づけない。

自分が弱いから。

この時は、この弱さのせいで、傷つく人がたくさんいるなんて、ワタシにはまだ分からなかったんだ。

だから、拓真に気持ちを伝えたくて伝えたくて仕方がなかった。

伝えられないって思う度に、“好き”が増すんだ。