ザァァァァ

風が吹く 桜が散る 皆が笑い 風が吹く―――…
私は見ていることしか出来ない。
桜や皆を見るだけしか出来ない。
桜は大いに舞い散り、大いに輝く。私は舞う桜を見ることしか出来ない。
皆は大いに笑い合い、大いに輝く。私は笑う皆を見ることしか出来ない。

ザァァァァ

風は私を置いてゆく。
皆も桜も―――

今日から新しい高校。
皆綺麗な制服を着てる。
皆一緒。私も一緒なのに私の服は皆のと比べて…
なんと言ったらいいのか…判らない。
気持ちが…おかしいから?
感情が泣いているような?


ザァァァァ

時が止まったように 桜の花びらは風が吹いてない間は落ちない。
時が止まって欲しい。桜はそう思っているように咲き誇る。
一生この美しさが残ればいいのに。
一生この儚さが皆に伝われば―…

ザァァァァ

「そろそろ教室入らないとー!あ!一緒にクラスぅ!キャァァァァァッッ♪」
「やったぁー♪」
「じゃー行こう~♪」

余計な声。
邪魔だ。
桜を着飾るのは風の音。
桜の花びらを着飾るのは太陽や月の光。
雑音なんてもってのほか。

「桜は…あんな声…必要ないのよね…?」

私は桜に話しかける。
私の長い黒髪をさらうように風が吹く。

ザァァァァ

「答えれるわけないわよね…」

ザァァァァ

「私…学校嫌いなんだぁ…」

ザァァァァ

「桜は…私を護ってくれる―――?」

ザァァァァ

「…っく」

ザァァァァ