魔の手は、徐々に、近づいていた。
『放課後さ、ちょっと寄り道してかねぇ?』
「うん♪」
そう言われた、朝。
そして、今は放課後。
「どこ行くの―?」
『着いてからのお楽しみ~』
「ケチ―っ」
一体、どこなんだろう?
『着いたぞ』
「わぁぁ!!すっごい綺麗」
そこは、一面に広がるひまわり畑。
黄色いじゅうたんがあたしの目に映る。
『な?凄いだろ』
「うん!あたしなんかより背大きいし、迷子になりそうだよねっ」
『そうだな(笑)うし、ケータイで写真撮るか!』
「うん!」
あたしはケータイのカメラをひまわりに向けた。
『バカッ!ツーショットでだよ!』
「えっ」
あたしの頬は、真っ赤に染まる。
『もっとくっつけよ』
「う、ん」
あたしと湊は最高の笑顔でピースを作る。
カシャッ
待ち受けにしよう♪
『帰るか』
「うん」
この時のあたしたちは笑顔だった。
だけど、その笑顔も、なくなる…。
あの、1人の女の手によって…。
あたしは、学校帰り、またひまわり畑に来ていた。
今、一番お気に入りの場所。
「それにしても大きいなぁ…」
あたしはひまわりに手を伸ばした。
その時――…。
ひまわりの隙間から、手が伸びてきた。
「えっ―…」
グイッと引っ張られ、あたしはひまわりに埋もれた。
目の前には、たくさんの男たち。
一体…なに?
あたしは押し倒された。
身の危険を感じたあたしは、大声を出そうとした。
「誰…ッ―――」
口をガムテープで塞がれた。
「ッ――――!!??」
「騒いだら殺すぞ」
ビクッと体が震えた。
「結構可愛いじゃん?ラッキー♪」
「さっさとやるぞ」
やるって、なにを―…?
男はあたしの制服を脱がそうとしきた。
あたしはバタバタと抵抗したが…
あたしの両手は簡単に男の片手で身動きをとれないようにされた。
あたし、どうなるの…?
必死に抵抗しても、男の力には敵わない。
ただ、涙が止まらなかった。
怖い、怖い。
誰か、誰か、湊、助けて…。
どうして、どうして、どうしてこんな目に合うの?
頭に浮かぶのは、湊の笑顔で―…。
湊、ごめんなさい。
湊、汚い体になって、ごめんね。
湊、湊、湊……
大好きだよ―…。
止まらない涙が、ひまわりの根を濡らした。
あたしは、レイプされた――……。
「おい、湊、湊!!」
『んだよ、うっせ~な』
「愛華ちゃんが男に連れられてどっか行ったぞ!」
『ブッ!はぁ?』
俺は飲んでいたコーヒーを噴き出した。
それよりも、焦りが生まれた。
『どこ行った!!??』
「分んねぇ」
俺は急いで教室をでた。
『ハァッ…ハァッ…どこだ!!??』
すると、どこからか声が聞こえた。
「ゃっ。誰か……」
愛華の声?
「湊―――!!」
俺が駆け付けると、愛華は男にキスを迫られていた。
俺は衝動的にソイツを殴った。
『俺の、好きな女に手ぇ出すんじゃねぇよ!!』
そう、言ってやった。
男はどこかへ行った。
ソイツが笑っていたことに、俺は、気付かなかった。
『愛華、何もされてないか?』
つーかされてたら許さねぇし!
「ん…。ね、さっきの、なに?」
さっきの?
あ、俺、言ってしまったんだっけ…。
『―…っ。好きだっ。俺、ずっと愛華のことが好きだった…。ずっと、素直になれなかった。愛華、傷付けて、ごめん。今更遅いかもしれねぇ。けど、俺は、愛華が好きなんだ…』
やっと、言えた。
俺の、気持ち。
ずっと秘めていた気持ち。
やっと、素直になれた―…。
でも、きっとダメ、だろうな―…
「あたしも好きぃ」
えっ―?
『ホントか?こんな俺で、いいのか?』
「湊がいいっ!」
俺は愛華にキスをした。
『お前が可愛いこと言うからだからなっ』
今日の俺、やけに素直になれる…。
「ッ―…バーカ!」
『怖かったよな?愛華、俺がお前を守るから…。絶対、守るから…』
「うん…」
なぁ、愛華。
肝心な時に守れなくて、ゴメン。
守ってやれなくて、ごめんな…。
お前が一番苦しいトキ、そばにいなくて、ごめん…。
俺は放課後、愛華を誘った。
この前見つけたひまわり畑。
ぜってぇ連れてきたいって思った。
愛華、喜んでくれるかな?
放課後、愛華を連れてきた。
「わぁぁ!すっごい綺麗」
目をキラキラ輝かせている愛華。
連れてきてよかった。
俺は一緒にケータイで写真を撮ろうと誘った。
なのに鈍感な愛華はひまわりを撮り始める。
『バカッ!ツーショットでだよ!』
しまった!
思ってたことが声に―…。
「えっ」
愛華の顔が赤く染まる。
なんでこいつはこんなに可愛いんだろう?
『もっとくっつけよ』
「う、ん」
俺と愛華は笑顔を作る。
カシャッ
待ち受けにしようかな…。
なんて思ってる俺ってどうなの?
『帰るか』
「うん」
また、連れてこよう。
この時の俺たちは笑顔だった。
でも、その笑顔が、なくなる。
この写真が、嘘のようになる。
あの、女のせいで…。
全てが、壊される。
放課後…
よし、鞄に荷物も詰めたし。
『愛華―「湊くん♪」
チッ、田神のヤツ、遮りやがって。
『なんのよう?』
「先生が、資料室に来いだって♪」
『あ~分った』
今日は一緒に帰れないか…。
『愛華、今日一緒に帰れない…』
「そっか。わかった!また電話してね♪バイバイ」
『ん』
俺は軽くキスをして、教室をでた。
もう、あいつの計画が始まってた。
いや、その前から、あいつは動いていたんだ。
あいつは俺たちの全てを狂わした。
俺は、一生あいつを許さない。
資料室に行っても、誰もいなかった。
なんなんだ?
そのとき…
ガチャッ
ん?もしかして…。
鍵、閉められた?
俺はドアを開けようとするが、やっぱり開かない。
でも、まだそんな時間じゃねぇよな?
俺の頭に『?』が埋め尽くされた。
ただ、どうしてか、胸騒ぎがしてならなかった―…。
どうして、こんなにも胸がざわざわすんだ?
『はぁ……』
どうやって出よう?
あ、ケータイ!
って、教室だし…。
『最悪だ…』
「~でさ!そんで~」
「え~、そうなの?」
ん?この声は…
柊斗と高松!!??
俺はどんどんと叩く。
「誰かいるのかな?」
『柊斗!俺!』
「は!?湊?なんでこんなとこにいんだよ」
『閉じ込められた!鍵開けてくれ』
「お、おう!ちょっと待ってろ」
数分後…
ガチャッ
鍵が開いた。