教室へ戻る途中、花枝と喋っていた。
「あれって、優斗さんだよね?」
「う、うん」
「ビックリしたよね」
「ホントにね。朝、楽しみにしててって言われたんだけど、このとことだったんだ…」
そうこうしているうちに、教室についた。
『愛華、兄貴のこと知ってた?』
「知らなかった…。え、てか、湊も知らなかったの?」
『あぁ…』
その後先生と優兄が入ってきた。
はい、女子がキャーキャーうるさいです。
あたしと花枝は耳を塞ぐ。
花枝は騒がないのかって?
だって花枝は優兄に結構会ったことがある、普通の反応。
「みなさん、今日から3週間よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いしま~す」
女子は高い声を出しています…。
ほんと女子って怖いですね(笑)
あたしはボーっと外を眺めていた。
「谷本さん、谷本さん」
「へ、はい!」
「先生の話、ちゃんと聞いて下さいね。罰として放課後残って雑用頼んでいいですか?もちろん僕も手伝いますから」
営業スマイル――!
「は、い」
くっそー、優兄め!
周りからはずるい―という声が飛び交っています…。
変わってあげようか?
**放課後**
「じゃ、愛華、やるぞ」
「あれ、谷本さんって呼ばないんですか?矢原せ・ん・せ・い?」
「からかうなよ、愛華」
「他の子に手伝わせばいいのにッ」
「だって、男子はほとんど部活。湊は無理だしな。女子はうるさい」
「花枝がいるじゃん」
「花枝ちゃんに悪いだろう?」
「ちょ、あたしは!?」
「愛華はいいじゃん。幼馴染みなんだしさ」
「もう!けど、ほんと驚いちゃったよ」
「ハハっ、集会んとき、湊も愛華も目ぇ丸くなってたからな」
「見てたの!?」
「おう。愛華可愛いから、すぐに見つけれたよ」
「そういう冗談いいから!早くやろうよ」
「へいへい」
その後あたしと優兄は喋りながら地味な仕事をやった。
「あ、愛華。みんなの前ではちゃんと矢原先生って言えよ?」
「分ってる。優兄だって、愛華って呼んだらダメだからね?」
「分ってるよ。うし、終わった。んじゃぁ帰るか」
「へ?」
「車で送ってく」
「ありがと♪」
「送ってくれてありがとね」
「おう!」
「じゃぁ先生?また明日」
「おう、また明日な」
あたしは部屋に入り、ベッドに寝転んだ。
優兄が先生か…。
優兄、大学でも頑張ってたしな。
優兄ならいい先生になるだろうなぁ…。
あたしはウトウトしてきて、眠りについた。
苦しい…
辛い…
湊のことを想うだけで…
胸が締め付けられる…。
あたし、こんなにも湊が好きなんだ…。
怖い…。
湊の反応が、怖い…
けど、動かないと始まらない…。
優兄、あたし、やるよ。
告白、する。
「湊…」
『んだよ』
「明日の放課後、教室に残ってて?」
『?分った』
あたしは優兄に電話をする。
「もしもし?」
「優兄?あたし、明日、告白する」
「そっか…。頑張れよ」
「ありがとう」
どんな反応をされても、大丈夫…。
そう…簡単に思っていた。
けど…
現実は、違った…。
**放課後**
2人きりの教室。
『なに?話って』
「………」
『早く言ってくんねぇ?』
こっちは心臓バクバクなのにっ!
あたしは深呼吸をする。
よしっ。
「あたし、湊のことが好きだよ」
言った…あたし、言ったよ?
『え、なにそれ』
「へ?」
『冗談だろ。愛華、俺のことからかってんの?』
「は?」
『お前みないなブスと誰が付き合うかよ』
「ッ!…にそれ…」
ハハっ、妄想と一緒でやんの…。
「…たしだって…」
けど、思ってたより…
「誰が…あんたなんかと…付き合うかっ…」
すっごく…心が痛いよ―…。
『あ、いか?』
涙が、止まらない…。
「…ッ湊のバカッッ」
あたしは涙を流したまま、耐えきれず教室をでた。
バカバカバカッ!
本気だったのに…。
でも、どうしてだろう…。
妄想と同じなのに…。
覚悟だって、してたハズなのに…。
思っていた以上に……
――辛い。
あんな反応するかもって、思っていたんだけどな。
なんで、涙が止まんないんだろ?
涙がどんどん溢れる。
もう、嫌だよ……。
その時、ドンッと誰かにぶつかった…。
顔を上げると……
「愛華ッ!?」
「ゆ…にぃ…」
優兄がいた。
「愛華、どうしたんだよ!そんなに泣いて、なんかあったのか?告白するんじゃ…」
あたしは力なく笑った…。
「へへッ…ダメ、だったよ」
「…え?」
「てか、信じて…もらえなかったの…。冗談だろ?って。あたしみたいなブスと、誰が付き合うかって…言われちゃったぁ…」
「愛華……」
「妄想とまるっきり同じだった…よ。覚悟もしてたんだよ?…こんな風になるんじゃないかって…。けど、さ?なんでかな…想像以上に…キツイや…。想像以上に…苦しいや…」
「愛華、無理して笑わなくていい。泣け。胸、貸してやるから」
優兄の優しい言葉に、あたしは甘えた…。
「ッぅ…ヒッ…ふぅ…ぁ…」
「声、抑えなくていいから…」
「ッぅあ――――――ッッ……」
優兄は、優しくあたしの頭を撫でてくれた…。
優兄は、泣きやむまでずっと、ずっと撫でてくれた。
「ッ…優兄、ありがとう」
泣きやんだあたしは、笑顔を見せた。
「気にすんな。愛華、よく頑張ったな」
「…うん。相談乗ってもらったのに、いい結果じゃなくてゴメンネ」
「謝んなよ。そんなこといいから。愛華はホント、よく頑張ったよ」
「ありがとう。優兄のおかげで、ちゃんと言えた。…あたし、諦めるよ」
「それでいいの?」
「え?だって…」
「本気の告白じゃないって、誤解されたままでいいのか?悔しくない?」
「ッ…悔しいよ」
「じゃぁ、もう少し頑張れ。諦めるのは、まだ早い」
「頑張っても…いいのかな?」
「当たり前。また、相談とか乗ってやるから。泣きたいときは、胸貸してやるよ♪」
「ハハっ、ありがとう。あたし、頑張る!」
「おう!じゃぁ、明日また元気にウチに来いよ」
「…うん♪」
あたしの気持ちは、少しだけ晴れた。
優兄、ありがとう、あたし、頑張るね。
ちゃんといい結果、優兄に言いたいし。
失恋したけど、あたしの未来はまだ明るかった…。