次の日の放課後…
『愛華、帰るぞ』
「あたし、今日は湊と帰れないから」
『はっ!?なんでだよ』
「み、湊に関係ないじゃん!じゃーね!」
まさか湊のことで相談なんて言えるわけないじゃん!!
あたしは走って教室を出た。
あ、女子がたくさんいる。
あそこにいるな。
う~ん、どうしようかな。
困っていたら…
「愛華!」
と声がした。
女子が一斉にこっちを見る。
周りは、またあの子だよ。
湊くんとも仲いいのに、あんなイケメンとも仲良しなんてありえない。
男好きなんじゃん?
などなどと、好き放題言っている。
まったく、この兄弟は…。
優兄は、そんなことに気付かず、あたしに手を振る。
あたしも振り返す。
「愛華遅いぞ~」
「ゴメンネ、優兄」
「じゃぁ、どうぞ、お姫様♪」
そう言うと、車のドアを開けた。
「ありがと」
優兄はホント紳士だな~。
てか、ホント女子の視線痛い…。
そして最後に優兄は
「湊と仲良くしてやってね」
と言い、車を発進させた。
ウインクした優兄を見た女子が、歓声を上げたのは、言うまでもない。
**喫茶店**
「で、愛華、話ってなに?」
「え、っとね?あの…」
いざ言おうとすると、すっごい恥ずかしい。
「湊のことかな?」
「へっ!?なッんで?」
「なんとなく。あれ、ビンゴ?」
「うん…。あのね?あたし、湊が好きになったみたいなの」
「で?」
「へ?あ、だからね?どうしたらいいのかなって…」
「そんなの簡単だよ。告白しなよ」
「こ、告白!!??」
ヤバッ、大きい声出しちゃった…。
「む、無理!ぜーったいに無理!!」
「なんで?」
「だって、湊の態度みれば分るじゃん!あたしのことなんか嫌いだって!」
「けど、言わなくちゃなにも始まらないよ?」
「う、うん…」
「ま、ゆっくりでいいからな。あ、俺、講義行かなくちゃ。悪い愛華。帰るな。お金は払っとくから、ゆっくりしてけよ」
「あ、ゴメンネ、講義あるのに話こんじゃって!お礼にあたしが払うから!」
「女の子に払わせません♪じゃーな」
「あ、りがと」
不覚にも…優兄の笑顔にドキッとしてしまった…。
告白…か。
あたしが、湊に…
あたしはちょっと妄想してみた…。
「湊、あたし…湊が好きだよ」
『俺も、好きだよ』
…ありえない!
もっと現実みろ、あたし!
きっと、現実はこうだよ…。
「湊、あたし…湊が好きだよ」
『は?ブスが何言ってんだよ。お前なんかありえねぇから』
「はぁ!?冗談だしッ!誰が湊なんか好きになるかっつーの!」
…なんか、ホントにこうなりそうで怖い…。
「はぁ……」
どうしよ…。
優兄…やっぱりあたしには無理だよ―…。
愛華といつも通り帰ろうとしたら、帰れないって言われた…。
なんでか聞いたら…
―関係ない―
って言われた…。
なにこれ、微妙に傷つく。
んなんだよ愛華のヤツ…。
まさか、男と会うとか!!??
『………』
あと、つけるか…。
ハハっ、ストーカーみてぇだな、俺。
マジだせぇ。
俺は、走って愛華を追いかけた。
もちろん、気付かれないように。
玄関を出た俺は、愛華を探す。
どこ行った?
『…なんだ、あの人だかり』
つーか女子の塊。
なんかいんのか?
『あ…』
愛華が困った顔をしている。
愛華の元へ駆け寄ろうとしたら…
「愛華!」
と、呼ぶ男の声。
…は?
『兄貴…?』
なんで兄貴がいんの?
愛華は兄貴に促され、助手席に乗った。
『マジかよ…』
あいつ、兄貴とどこ行くんだよ…。
『くそっ』
「あ、湊くんだぁ!」
「さっきの人、湊くんのお兄さんなんだね!」
「2人ともイケメン~」
『あっそ!』
俺は女子を振り切り、走った。
あった!
兄貴の車。
俺は喫茶店へ入り、愛華たちの近くの席に座り、気付かれないように耳を澄ました。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
バッ!話かけんなよ!
「コーヒー」
「かしこまりました」
チッ…。
あれ、つーか俺、今何円持ってるっけ?
『ヤベ…』
所持金10円とか…。
どうすっかな…。
ま、いいや、なんとかなるだろ。
そんなことを思っていたら、コーヒーが出てきた。
俺はそんなことはかまわず、耳を澄ます。
途切れ途切れに聞こえる愛華と兄貴の声。
「あのね?…たし、…が好きになったみたいなの」
『……は?』
好きになった?
誰を?
肝心な部分が聞き取れなかった。
愛華…好きなやついんのか?
…俺?なわけねぇな。
ヒドイことばっか言ってるし…。
「告白しなよ」
兄貴のバカ野郎!
愛華をあおるようなこと言うなよ!
マジで告白したらどうすんだよ!
その後、兄貴は席を立った。
俺の席に近づく兄貴。
「ほら、金」
『?』
兄貴は、コーヒー代をおいて、店を出た。
ハハっ、兄貴、気付いてたんだ。
俺は、ぬるくなったコーヒーを飲んだ。
何だろう…いつもならこのくらい平気なのに…。
すっげぇ苦い…。
愛華、お前は一体誰を想ってる?
俺は、愛華だけを想っているよ…。
頼むから、気付いてくれよ…。
優兄に相談して、しばらくが経った。
あたしはいつも通り、湊を起こしに行く。
「湊起きろー!」
あたしは湊の体にダイブ!
しようとしたら…
『…おはよ』
ムクっと湊が起きた。
「めずらしいね、すぐに起きるって」
『まぁな』
「んじゃぁ下言ってるね」
『ん』
めずらしいこともあるんだな~。
下に行くと、優兄がいた。
「おはよ」
「はよ。ど?決心はつきましたか、愛華さん♪」
「もう!からかわないでよッ」
「ハハっ、ゴメンゴメン。けど、そろそろ苦しくなってきてんじゃない?」
「うっ!」
確かに最近、湊を想いすぎて、苦しい…。
「愛華はそれだけ、好きなんだな」
「…そうなのかな?」
「素直でよろしい」
「からかわないでって」
「はいはい。ま、いつでも相談しろよ?」
「ありがと」
「どういたしまして。あ、愛華。今日楽しみにしてろよ」
「へ?何を??」
「秘密♪」
その後紅茶を飲んでいると、湊が下りてきた。
そしていつも通り学校へ行く。
なにもかもが、いつも通りだと、思っていた。
朝教室に行くと、集会があるから体育館へ行けと書いてあった。
花枝と一緒に体育館へ。
「なんなんだろうね?」
「あ~、そろそろあの時期じゃん?」
「あの時期って?」
「それは~」
花枝が言おうとした瞬間、先生がマイクを通して喋り始めた。
「みなさんおはようございます。今日から教育実習生の人が来られます。その方々の紹介をします。では上がってください」
あぁ、教育実習生の時期か…。
ボーっとしていると…
『「!!」』
湊とあたしは目を丸くした。
教育実習生が紹介していく中、最後の人になった。
「実習生の矢原優斗です。数学を担当します。クラスは1-2です。3週間よろしくお願いします」
女子がキャーッと歓声を上げる。
そう、紹介された通り、目の前にいるのは、優兄だった。
しかもウチのクラス担当!?
朝言ってたのは、このことなんだ…。