そして今日、俺は愛華にヒドイ言葉を言った。
―マジで太った―
女子が言われたら、ぜってぇ傷つく言葉を、俺は愛華に言ってしまった。

―乗られるとマジで死にそう―
そんなの、嘘だ。
いつも、軽すぎって思ってる。
ちゃんと飯食ってんのかよって思う。
それに、すっげぇ嬉しい。
なのに…俺は、ヒドイことを言った。
ホントに俺は、最低だ。

―ダイエットしろよな~?―
そう言った瞬間、愛華の顔が曇った。
いや、その前から…か。
ダイエットしたら、コイツぜってぇ倒れるだろ!?
なんで、思ってるのと逆のこと言ってしまうんだ…俺は。


俺は…バカだ。
次の日。
愛華はいつも通り、俺の部屋に来た。
一つ変わったことと言えば…。
今日は俺に乗らなかったこと。
バシバシと叩かれただけだった。
愛華が出て行き、着替えている俺は、ずっと考えていた。
やっぱ…
『気にしてんのか…?』
どうすりゃいいんだよッ!

どれだけ考えても、正解にはたどりつけねぇ。
『あぁぁ!くそっ』
ホント…

情けねぇな。
下に行ったら、愛華が兄貴にお姫様だっこされてた。
不覚にも…お似合いだと思ってしまった。
つ~か…愛華、顔真っ赤。
俺には…そんな顔見せたこと…ないくせに。
なんで兄貴にはそんな簡単に見せんだよ。
俺の知らない顔、見せんな…。

その日の俺はかなり不機嫌だった…。

家に帰ると、兄貴に言われた。
「あんまヒドイこと言うなよ?愛華、メッチャ可哀想じゃん」
『…分ってるよ』
分ってんだよ。
なのに…分ってること言われたら…
すっげぇ腹たつ…。
ダイエットを始めて1カ月が過ぎた。
だんだん痩せてきてる♪
「愛華、痩せた?」
「ホント!?やったぁ」
「ちゃんとご飯食べてる?」
「食べてるよ☆あ、次体育でしょ?花枝いこ!」
「うん」
食べてるって言うの、嘘。
ホントは、あんまり食べてない。

だって…痩せたいもん。
「今日の体育は、男女合同サッカ―だ」
合同!?
最悪なんですけど!
しかもなんで…
湊と同じチームなわけ!!??
ほんっとありえないッ!
「ちょ、愛華?あんた顔いろ悪いよ!?大丈夫なの?」
「ん?平気平気♪」
『………』


この体育で……
あたしが湊を好きになるなんて……


思っていなかった。
試合が始まった。
湊を見ている女子が歓声をあげている。
どこがいいんだか。
「愛華ッ!?」
『愛華前ッ!』
前ぇぇ?
は、え、ちょ、マジ――!?
あたしに向かって飛んでくるボール。
「ッ!」

ガンッ

見事頭に直撃。
「いたた~」
地面に尻もちをついたあたし。
跳ね返ったボールは、味方チームに行きわたったみたい。
立とうとしたら…。

目の前が真っ暗になった。
「ッ……」
『愛華ッ!』
あたしは、意識を失った。
感じる、人の体温。
「……ん?」
ここ…どこ?
背なか…?
この背なかは…
「み…な…と?」
『目ぇ覚めたか?』
「う…ん」
あたし、今、湊におんぶされてるみたいです…。
『今、保健室向かってる。貧血?』
「かな?」
どうして?
『ちゃんと飯、食ったのかよ』
「……あんまり」
どうしてこんなにも─…
『なんで食わないんだよ。ちゃんと食え』
「だって…太るじゃん」
─ドキドキしてるの…?
『ッ!バカ…。あれ、嘘だから。だから、ちゃんと食え』
「…ん」
ねぇ、湊?
どうして…嘘なんかついたの?


湊のコト……


分かんない。
保健室についた。
先生いないんだ…。
『とりあえず、ベッドに座れ。血ぃ出てるから、手当する』
「ありがとう…」

湊に触れられる部分が熱くなる…。

そっか、これが……



──恋。──


あたし、湊に…



恋したんだ…



『たっく、心配かけんなよ…』

心配…してくれてたの?


そう思うだけで……


胸がきゅーってなった。