「来たんだ?」


駅前の改札口

白く息をきらして駆け寄る、彼女をチラッと見上げた。


「来たわよ。」

「来ないかと思った。」


ざわめく声も、耳障りな騒音も、今は何も聞こえない。


通り過ぎる人の足音と、自分の鼓動が重なる。


マフラーに顔を埋めた彼女の頬を、そっと両手で包んだ。


「・・・・・」

ビクッとして怯えた様な目で俺を見上げる。

だけどもう手遅れ。


「知ってた?ずっと好きだったの。」


「・・・・・」


細く微笑んみながらそう言った俺に、貴女は表情一つ変えはしない。

ただ真っ直ぐに視線をこちらに向けるだけ。


あぁ、知ってたんだね?

だから此処に来たんだね



「あんたが幸せじゃなきゃ、俺はいつまでも前に進めない。」


「・・・・・」


「わかってるでしょ?だから、幸せになってよ」


「・・・・・」


目を伏せた彼女の頬を、両手で包んだまま・・・


「・・・・・」


腰を屈めて、その小さな唇にキスをした。