いつもの海に着いてもさくらの機嫌は直らない。
…まさか、あの日か……?
…って言ったら怒られるんだろうな…。
「何してるの?」
俺がイロイロ考えている間に、彼女はすでに座り込んで花火を広げていた。
もちろん、火を付けろと言わんばかりに俺を睨みながら。
「はいはい……。」
溜息をついて、線香花火に火を付けると花火は小さな光を発し始めた。
「きれい。」
花火を見て、少し機嫌も直ったのか、さくらはやっと笑顔を見せた。
よかった……。
その笑顔を見て、俺も隣に座り、線香花火に火を付けた。
毎年恒例の線香花火。
今、聞こえるのは花火と波の音だけ。
俺は昔から、この時間が1番好きな時間だった。
「ねぇ?」
「ん?」
珍しく、花火が終わらないうちに、さくらが沈黙を破った。
「昔…よくこれにお願い事したよね?」
「線香花火か…?」
「そう。」
「懐かしいな。」
花火が落ちないで全部燃えれば願いが叶う。
そんな話を信じて花火して。
いつだったか…花火が落ちて、さくらが大泣きした事もあった。