腕を振りほどこうとして、やめる。
お父さんが真っ直ぐに私を見ていたから。
その瞳はどこか悲しそうで、だけど何かを決意したかの様に強い光を持っていた。
「雪那の気持ちは分かった。お前がそこまでの決意を持っているなら……父さんと賭けをしないか」
「は?」
堅実なお父さんから賭けなんて言葉を聞くなんて。
思わず間抜けな声が出る。
お父さんはそんな事も気にしないで続けた。
「父さんの知り合いに、高校を経営している人がいる。そこはお前の志望校ほど有名ではないが、演劇に力を入れているそうだ」
そこで三年間、男として通う。
正体がばれないように。
見事にやり抜けば、今後一切、私の夢には口を出さない。