玄関で靴を履く。

一度だけ深呼吸をして、ドアに手をかけた。

すると、強い力が私を引き戻す。


犯人を確信しながら振り向くと、予想通り。

お父さんが私の腕を掴んでいた。



「離して!」

「……何処へ行くんだ」



驚くほど冷静に、お父さんは言った。

その様子に若干怯みながら、私は相変わらずの口調で答えた。



「お父さんの居ないところ!」

「学校はどうするんだ」

「行かない。高校も行かない」

「やりたい事が……できないからか?」

「そう! 分かってるなら、離してよ!」