だからかな。
お父さんはすごく驚いた顔をして、私を見ていた。
「雪ーーー」
「お父さんなんて、大っ嫌い!」
初めて見る、お父さんの傷ついた顔。
だけど私にはそれを気にする余裕すらなくて。
乱暴に足音を立てて、自分の部屋に駆け込んだ。
「……出て行こう」
今すぐに。
後先なんて考えないで、旅行カバンに詰められるだけの服を目一杯放り込む。
お小遣いはいっぱいある。
漫画喫茶にでも泊まればいい。
学校は、しばらく休もう。
演劇部には、顔だけ出して。
しばらく休むって伝えよう。
準備の間それだけ考えて、私は部屋を飛び出した。