「あなたも、大丈夫ですか?」
僕が悪いのに、男の子は立ち上がりながら心配そうに声を掛けてくれた。
ひっくり返りそうな声ですかさず「大丈夫です、すみません」と言う。
並んでみると、思ったよりも背は低くなかった。
男の子としてはちょっと低いかもしれないけれど。
それを、なんだか可愛い、と思ってしまった。
そんな自分に慌てて、相手は男だと言い聞かせる。
少し間が空き、冷静になって我に返った。
「すみません。あたし、急いでるので……」
「あ、いえ。でも、気をつけて下さいね」
「え?」
「あなたの様な可憐な方に、傷でもついたら大変ですから」
男の子は引き止めてすみません、と苦笑した。
その魅惑的な笑みに、一瞬、心臓が跳ねた気がした。