そこまで計算尽くなのか、それとも自然体なのかわからない。

本能的に、この人は絶対敵に回したくないと思った。



「……郁弥君。いや、イクミ君」

「はい」

「君の気持ちは分かるが、少しは親父さんの気持ちも分かってやってくれ。今は無理でも、いずれは」

「ふふ、分かってますよ。あたしだって、そこまで子供じゃないですから。時間が経てば、いずれは」



意地悪く笑ってそう返すと、理事長は愉快そうな笑い声を上げた。



「さぁ、そろそろ次のお客様が来る頃だ。君も入学式に間に合わなくなってしまうし、今日はここでお開きにしようか」



そう言われて思い出す入学式の事。

綺麗さっぱり忘れてた。



「すみません。 あたし、行きますね」

「あぁ、いっておいで」



まるで我が子を見る様な優しい目に見送られて、僕は理事長室を飛び出した。