しばらく行くと、木の陰から男の子が出てきた。
実はこの男の子が、みんなから“オオカミ”と呼ばれている危険人物なのだ。
年齢は丁度赤ずきんと同じくらいだろうか。
オオカミは一人で来た女の子を襲うのが趣味なのだが、最近そのオオカミの事件を聞かないので、お母さんも安心して赤ずきんを見送ったのだろう。
いつもおばあちゃんの家に行く時は、お母さんと二人で行っていたので、赤ずきんはオオカミの存在を知らなかった。
オオカミは、一目見てこのかわいらしい赤ずきんを手に入れたいと思った。
そこでオオカミは赤ずきんに声をかけた。
「そこのかわいいお嬢さん。バスケットを持って一人でどこへ行くの?」
まぁ、カッコいい男の子だわ。…でも、どうしてこんなところにいるのかしら?
そう、最初は不審に思っていた赤ずきんだが、素直に答えた。
―――実はそれがいけなかったのだと、この時の赤ずきんには分からなかった。
「えっと、今日はあたしの誕生日だから、おばあちゃんの家に誕生日をお祝いしに行くの」
「へー、そうなんだ。そのおばあちゃんの家ってのはどこにあるんだい?」
「ココをもう少しまっすぐ行って、左に曲がったところにあるの」