「そのあともその鶏の指す方向に足を運べば、金銀財宝、たくさんの野菜の苗、なんでも見つかった。

おかげでご先祖さまたちは生き残り、さらにこの土地は肥えたってわけだ。」



それにシギは何度もうなずいたあと、聞く。


「その後鶏はどうなったんですか?」



それに店主は一度うなずいてから答える。



「しばらくして鶏は死んでしまったんだ。

しかしその鶏の屍は腐ることなく、風になった。

その風はこの西の地方すべてを包み込む風となって、この土地をいつまでも守っているんだとさ。」



そして店主は突然首元から服の中に手を入れ、何かを取り出す。


すると店主の手に握られていたのは、服の中に隠れるようにつけていた風見鶏を象ったネックレスだった。



「それ以来俺たちは屋根に風見鶏を飾って、こうしてルーラの神様にあやかったネックレスも身につけるようになった。

風見鶏は今でも、この土地をかける風となったあの金色の鶏の方向を向いていると、そういうわけだな。」



店主はネックレスをまた服の中に入れながら立ち上がる。


シギは感心したようにその店主を見上げたままで、ダグラスはそれにまた小さく笑った。



それにシギが気づいて、また無表情になるが少し顔を赤らめて反論する。



「感動しませんか?
あまりにも神秘的な話です。」



ダグラスはまた小さく笑い、制するように片手を上げる。


「はは、ああ、すまない。
そうだな。不思議な話だ……

それにしても、ルーラの神はどんな存在だったんだろうな。」



それにシギも考えこみ、ダグラスにしか聞こえない小さな声でつぶやく。



「そうですね……

風をまとっていた、という話からすると、精霊の可能性が高いですね。」


それにダグラスも小声になって返す。


「精霊というと、君やレイシアが召喚できる魔力の結晶だろう?

それも大きな精霊となると、あの夜君が描いたような大きな魔法陣と莫大な魔力が必要じゃないか。」