海耶の死から、ちょうど一年が経過した。

今年の夏も、容赦なく太陽が照り付ける。


しかし、青白い水槽の中では、熱帯魚が涼しげに泳ぎ回る。


「義也くん、熱帯魚を飼い始めたのね。でも不思議。こんなに大きな水槽に一匹なんて──熱帯魚って、普通沢山飼うものじゃないの?」


「一匹でも綺麗だろ?」


「それは……そうだけど」


一匹で充分だ。それ以上は必要ない。


乃梨子は不思議そうな顔をしていた。確かに、不思議かもしれない。


「……海耶」



名前を呼ぶと、水槽の中の『彼女』が、嬉しそうに円を描いた。




−end−



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