刃先を少しだけ刺しちくっとした痛みを感じた瞬間、無意識に右へと引いた。

「・・・っ。」

 じっと傷口を見ながらカッターを手から離し、床に置いた。

 漢字の一の字にぷつぷつと、じわじわちが滲み出るのをただじっと見つめた。

「こんなんじゃ死ぬわけないよね。」

 ぼそっとつぶやいた。

 ドラマなんかで手首を切って死ぬ人をよく見るけど、あの人たちはどれだけ深く傷をつけているんだろう。そんなことを、なんとなく思った。