この授業が終わったら普通に話し掛けてみよう。私の勘違いかもしれない。大丈夫、平気。

 そう思い込むので精一杯だった。授業内容なんて全く頭に入らず、私の頭の中は姫佳でいっぱいだった。

 考えたら考えただけ、私の頭の中は負に陥っていく。

 早く授業が終わってほしくて、たまらなかった。

 いつもの何倍も長く長く感じた。

 授業が終わり、机の上を片付けたと同時に、姫佳の元へ向かった。

「ねぇ、姫佳、今度の土曜暇?」

 手紙のことには触れず、出来るだけ普通に、冷静に。震えないで、声。

 姫佳は机の上を片付け、手鏡を出し、前髪をいじっていた。

「ねぇ、姫佳ってば」

「・・・ふぅ」

 小さなため息があっただけで、返事はなかった。