「プリント集めているから、提出お願いしまーす」

「あっ、はい」

 慌てたのか、小走りで自分の席へと行った。私も後を追う。この子とまともに話したのは初めてかも知れない。

「はっ、はい。これでいいんだよね?」

「うん。ありがとう。あっ、このプリント名前書いてないよ」

 そう、この一言を言わなければ、私は今頃・・・。


 慌てて書いている村上さんを、私は待った。

 急いで書こうとしていたためか、シャーペンの芯がポキっと何度も折れていた。

「そんなに慌てなくていいよ。時間はまだあるし、ゆっくりのんびり書いて」

 そう言いながら村上さんの折った芯と消しゴムのカスを、手で寄せてあげた。

 そこに姫佳が教室へ入ってきた。