「西野さん?」

 先生は顔を覗き込んできた。

「嫌だなー、先生。何もないですよ。ただ最近勉強するのが少しストレスになってたみたいなんですよね」

 少しでも動揺を見せないように、私は冷静を装った。

 先生は信用出来る大人なのかもしれない。もしかしたら助けてくれるかもしれない。でも、『もしも』や『かも』の話に、期待なんか出来ない。それに、今の私には誰かを信用しようとする心がない。

 先生が姫佳に注意したとして、もし逆上されたら?今の状態より緩和されることを、私は想像出来なかった。

 一度植え付けられた恐怖は、こんなにも私を支配していた。