「な、なんだよ」

 低い声で驚いたように話す達也先輩は、少し笑っていた。仲が良さそうで、正直羨ましかった。

「いいから行くよ。優奈もそこの馬鹿彼氏連れて行きな」

「うっわ、早百合、馬鹿とはひどいなー」

 寝ぼけ眼で元基先輩は前髪をくしゃくしゃっとしながら、優奈先輩に話しかけていた。私はそれよりも、早百合先輩が、優奈先輩に言った「彼氏」という言葉に胸がちくっとした。

「はいはい、ここでは静かにねー」

「じゃー、またねー」

 先生に言ったのか、私に言ったのかはわからなかったけど、少し会釈しておいた。先輩たちはそのまま保健室を出て行った。

「嵐のようね」

 保健室の先生はふぅっと息を吐きながら小さく呟いた。