「痛いと思うけど許して、ごめん」
あくまでも中立を保とうとする歩。そうだよね、逆らえないもんね。でも、自分のいじめが原因で私が死ぬのは嫌だから私の前では味方のふり。あっちに行けばあっちの仲間のふり。
ねぇ、歩?しんどくない?
そんな言葉がふっと頭をよぎった。
「本当にいい加減にしてよ、マジ消えて欲しいんだけど」
急に大きい声で、外に聞こえるように歩は叫び始めた。外から「ははっ」とかすかに笑い声が聞こえた。
「これ以上姫佳傷つけたら許さないんだからっ」
そう言った瞬間、歩が勢い良く手を振り上げ、そのまま私が構えた手に振り落とした。手は平手にしていたからか、歩も平手で、パチーンと乾いた音がトイレの中に響いた。