あたしは泣き続けている悠也の顔を見つめながら、そっと目を瞑り、触れるだけのキスをする。
刻んでやる。
あたしの全部を、忘れられないように、最後の最後に、刻んでやったの。
そして、あたしは両手で悠也を突き放すとそのまま後ろによろけた。
「芽衣香、俺…」
「さよなら」
あたしはそのままドアノブに手を伸ばし、ドアを閉めた。
最後に見たのは、悠也の歪んだ泣き顔。
そして、閉まる瞬間に、悠也は言った。
「愛してる…」
でも、あたしは信じないよ。
その言葉は、きっと。
貴方が抱いたあの女にも
言った言葉なんだって、
そう思ったから。