ゆっくりと開かれた唇は滑らかで、落ち着いた声を放つ。




「わかってた、お前があいつの事を好きなことぐらい。」


名前を言わないのは
彼なりの優しさ。





「わかってた、俺があいつに適わないことぐらい。……わかってた。」



「ゴローちゃん…。」



「わかってたんだ、そんなこと。…だけどこれだけは譲りたくなかった。」




すっと、頬に手を覆った。優しくて温かい手なのに、今日はやけに冷たい