「次は男子ね。井川一真くん」
「あっ、、はい」
こんなよくある風景もう何度目だろう?まさに平和だ。
今でも、外では大災害が起きているし、戦争だって始まっているかもしれない。
あまりスケールのデカイ事は解らないが、世間では、色々な出来事や不運に踊らされている奴が沢山いるのは確かだ。
何故??自分だけ?と思うのは当たり前の事だ。
ただ、俺が言いたいのは、今まさにここにも不運に踊らされている男がいるということだ。
「小西悠くん」
春、麗らかな風が背中を押す。
「小西悠くん」
春、新しい出会い。そして別れ。
「小西く~ん」
春、希望と不安に満ちた更なる出発。
「寝てるの?? 起きて下さい」
春、それは、春眠暁を覚えず。
「こらっ!!起きなさい」
こんな早い段階で俺は階段を踏み外している。
何故って?それは、ダブってしまった。
しかも、2回も。
ダブる(留年)=原級留置とは、学校に在籍している児童・生徒・学生(在学生)が、何らかの理由で進級しないで同じ学年を繰り返して履修すること。落第や留年に対する公式の表現で、学校長の権限によって生徒、学生に対しこうした処分をすることを原級留置処置という。原級留め置き又は留級と表記される場合もある。対義語は「及第」・「通常の進級」である。
詳しいくはウキペディアで調べてくれ。
今悲劇的な、現実に立たされて17歳という若さで既に目の前には筋肉番付で出てくるような跳び箱が俺の目の前に立っている。
俺には、跳べない。
そう思うのが正解だ。
俺は、身体を伸ばしながら眠い目を擦ると同時にアクビをしながら返事した。
「ふぁ~い」
近づいてきたセンコーは、それでも笑顔で俺の名前を呼んだ。
「小西悠くん」
俺は、手をあげたが返事はしなかった。
別に反抗した訳でもない。
お約束の「後で、職員室ね」とかいう展開も期待してない。
あの時は自分が情けなくただ声が出なかっただけだ。
当然センコーは俺の事情は分かっている。
なんせ俺は既に3回目の1年生だからな。
教壇へ戻る際に俺に言った。
「あなたとは、特に約束だからね」
俺は、軽い会釈でそれに答えた。
クラスの奴等の視線が俺に集まったが、気にもとめずまた眠りについた。