白い、長い廊下をゆったりとした速さで歩けば、途中何人かのお年寄りに会った


「あら雪乃ちゃん、こんにちわ。お散歩かい?」


「雪乃ちゃん、今日は随分早いねぇ」


話しかけて来てくれるご老人に、出来るだけ精一杯の笑顔を作って答える

散歩のときにいつも会う人達


「雪乃ちゃんは元気だねぇ」


「今日も可愛いなぁ」


なんだか少し照れくさくなって、私は会釈をしてその場から離れた

散歩、といっても、病院からは出られない

だから私は屋上に向かう

私が行くときは、いつも誰もいなくて、高いところから町を眺めるのが気持ちいいの

風が強い日は髪がぼさぼさになっちゃうけど、今日はいい天気だし、きっと大丈夫



屋上へ向かうためにエレベーターに乗ろうと思ったけれど、中に車いすの人がいたから階段を上ることにした

スリッパがぱこぱこと音を立てる

階段を使っている人はいなくて、広い広い廊下に足音が反響した

少し怖くなって、進む速度を速める

ぱたぱた、と足音を立てると、二重に聞こえて、やっぱり怖い

今度からはエレベーターを使おうと決めた