「私、お腹空いちゃったー」


 そう言う樹里(じゅり)の手には、先ほど買ったベビーカステラの入った袋。中身は、まだ半分くらい入っている。


「ベビーカステラを食べてるのに、それでもお腹が空いてるってどういうことなの」

「だってお腹が空いたんだもーん。杏奈(あんな)もベビーカステラ、食べる?」


 樹里は幼い子供のように笑い、ベビーカステラの入った袋を私の前に差し出した。


「いや……正直、さっき食べた特大クレープのせいで、お腹いっぱいなんだよね」

「あー。あの30個限定の特大クレープね」


 美味しいって聞いたから食べたけど、あんなに大きいなら注文しなきゃよかったな……。

 食べてる途中でお腹いっぱいになっちゃって、樹里に手伝って食べてもらったけど、おかげでお腹いっぱい。

 歩くのもなんだか苦しいし、最悪だ……。


「次は何を食べようかなーっ」


 私に比べて、樹里はまだ何かを食べるつもりだ。今の発言と、にこにことした笑顔がそれを物語っている。

 ホント、どんなお腹をしているんだか。大食い世界記録に挑戦したら、1位になりそうで怖いよ……。