どこまでも高い水色の空と
もくもくと立ち上がる入道雲
そして一歩前には
君の大きな背中
そんな私と君の間を吹き抜ける
夏色の風
夏が来たんだって知らせてるみたい
――あの日から15回目の夏が
もう君は忘れてるよね?
吹き抜けた風にふわり
君の白いシャツがゆれる
あの日とかさなる夏色の風
でもやっぱり私は
忘れられないよ
15年前の君との
大事な大事な約束を
5歳の夏
私は見惚れてた
真っ白なレースのカーテンに
ふわりと舞っては戻っていく
よせては返す波みたいな動き
だけどね
私には波よりも
ウェディングドレスに見えたの
いつか私も着れるかな?
夏風にゆれる
レースのカーテンを見ては
憧れてたんだ
「日向ー!」
大好きな声に呼ばれる
私の名前
「颯樹!」
網戸の向こうには
いつもの目の細い笑顔
「どうしたの?」
私が首を傾げれば
ぱあっと輝く君の顔
「誕生日おめでとう、日向!」
一瞬で踊る私の胸
「颯樹ぃ、ありがとう!」
とってもとっても
嬉しいよ
なんでかな?
お日様にあたったみたいに
顔があついの
「プレゼントがあるんだ」
そう言って君が網戸をあければ
鮮明に見える大好きな君の顔
私は間抜けにきょとんとしたまま
君は私の左手をそっととるの
君は手をはなすとにっこり笑う
私の手には
薬指に銀の折り紙の指輪
……本当に?
幼くても
意味は知ってるよ――