これで良かったんだ。
私はただの実習生。
ひとときだけの存在。
教室の中には、耳障りな程、レナの声が響いていた。
「ねぇ、陸って呼んでいい?」
甘えた声で陸に話しかける声。
聞きたくないけれど、聞こえてしまう。
この部屋を出たいけど、やっぱり気になって聞いてしまう。
私はこの実習の為に母からもらったシャーペンを握り締めた。
昔、母が大事にしていた思い出のシャーペンだった。
カチカチカチ…
芯が途中で出なくなった。
『陸って呼んでいい?』の返事を聞きたくなくて、
シャーペンのカチカチに集中する。
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