「そんなに泣いちゃって、大きな目が小さくなるわよ~!」



カーテン越しの保健の先生の優しい声。



「私、一人で舞い上がって一人で傷ついて…ばかみたい。」


涙と鼻水でひどい声。


聞き取りにくい声をちゃんと聞きとってくれた先生が言う。



「肝心の本人がいない間にひとりで泣いて、悩んでももったいないわよ。ちゃんと本人と話しなさい。場所がないなら、ここ貸してあげるから。」



カーテンを少し開けて、私の様子を見た先生は、大きく息を吐いた。



「泣きすぎよ…もう。」


私の肩に手を乗せた先生。

その手を優しく2回トントンと、私の肩の上で弾ませた。

そして、またカーテンの向こう側へ移動した。



「先生、やっぱり好きになっちゃいけなかったんです。」



先生がくれたティッシュで鼻を押さえる。


「そうね。そうかもしれない。でも、恋ってそういうものよ。好きになろうとしても絶対なれないのと同じで、好きになっちゃいけないって思って止められるくらいなら恋じゃないわ。」




カーテンの向こうの先生の声は、静かに静かに心に染み渡る。