まだよく知らない私にそんな話までしてくれて、信頼できる先生だと思った。
きっと、私が陸のことを好きだと勘付いているから、
そんな話をしてくれたのかも知れない。
「生徒と恋愛ですか?ドラマみたいですね。」
綺麗な先生だから、憧れる男子生徒がいてもおかしくはない。
「ドラマみたいな素敵なもんじゃないわ。結局は問題がいっぱいでお互いあきらめちゃったけど。さっきの神崎君見てて、その頃の彼のこと見てるようだった。だから、私、図書館で調べものしに行って席を外したんだけど。よけいなお世話だったかしら?」
保健の先生は、ノートに何かを書きながらチラッと私を見た。
「あ…ありがとうございます。あの、なんて言っていいのか…でもありがとうございます!」
この先生には全部見透かされている感じがした。
長い黒髪に細いメガネ。
はっきりした顔立ちに優しい話し方。
「まぁ、短い付き合いになるけど、また何かあったらここに来て。私、口だけは固いから。生徒もよく、恋愛やエッチの悩み相談に来るのよ。」
また憧れの教師像がふくらんだ。
親にも言えない悩みを相談してもらえるような教師になりたい。
私と話すことで、気分がラクになるようなそんな存在。
漠然とした理想の教師像が、今、目の前にいる先生のおかげでくっきりと浮かび上がる。