■寂しい人間

その日の夜…
俺は駅の近くにあるファミレスに夕飯を食べに行った

1人で食べる事にはもう慣れた
逆に大勢で食卓を囲む事に慣れないけどね

『マズ…』

「寂しい」とか「悲しい」ってどんな感じだろう

今の俺、はたから見たら「寂しい人間」なのかな…


夕食を食べ終わり、店を出る
しばらく歩いていると誰かが笑う声がした

その声に大した特徴なんて無いのだけれど、俺には声の主が誰だかすぐ分かった

奈穂だ…

ヒラヒラのミニスカートに白いブーツ…
どこかのお嬢様みたい

そしてその横には若い男

『直樹、もっと早く歩いてよ!』
『うっさいなぁー…』

あいつが直樹…?

正直、予想は大外れ
どんな不細工と会うのかと思っていたのに、直樹は男から見ても整った顔をしていた


『まーなかっ♪』

呆然としている俺の横から突然、女が飛び付いてきた

『あ、アカリ…』
『偶然だね♪ 何してんのぉ?』

無邪気な笑顔に無性に腹が立つ
俺はアカリの体を壁にぶつけると半ば強引にキスをした

『まな…ッ』

無理矢理に服の中に手を入れ柔らかな胸に触れる

豊かな膨らみは俺の思い通りに形を変えた

『真中ッ 皆が見てる…ッ…!』
『アカリ… 俺の顔、どう思う?』
『…ッあ! カッコイ…ッと…』
『俺の事好き?』
『う…ん…ッ』

アカリは乱れた息遣いで苦しそうに応える

『直樹とどっちが?』
『え…? なッ 直樹?』

何なんだよコレ…
感じた事ねぇ気分…

『…ハァ…』

真中は溜め息をついてアカリを解放する

『悪い、八つ当たった…』

別に奈穂が誰と会おうと構わない

ただ…
【はい、家族と…】
嘘をつかれた事がムカつく

奈穂は上手に嘘がつけないと思っていたのに…

『真中… 何だか寂しそう…』
『…』

何でそう見える…?
女に嘘をつかれる事も浮気される事も初めてじゃないのに…

『寂しいなら私が慰めてあげるよ?』
『…うん…』

寂しい…?
やっぱ俺、「寂しい人間」なのかな…