■一緒に来いよ
○Side 奈穂

頭の中は真っ白
これからされる事に抵抗する気すら起きない

カチャカチャとベルトを外す音が聞こえる


真中くんが初めての相手ならいいかも知れない
きっと痛くないし、気持ち良くなれるだろう…

でも…
【裸で放置しやがって】
そう言って彼女を抱きしめていた彼の姿が消えない

こんな、体だけの繋がりなら要らないよ…

『…ごめんな…ッ…さい…』

彼女のものだと思えば思う程、どうしても涙が溢れてしまう

私には貴方との幸せな未来は思いつかない…

『も……止めて…?』



…あ…
ベルトを外す音が止んだ…
もう脱いでしまったの…?

恐る恐る顔を上げ、彼の下半身を見るとしっかりとベルトが締めてあった

『真…中くん…?』
『そんな顔されたら縮むっつーの!』

ち、縮む…
何が縮むのかぐらい私にも想像がつくのに…ッ

そんな平気な顔して言われたら、こっちが恥ずかしくなるよ

『どーせ授業サボってんだしコンビニに何か買いに行ってくるわ』

真中くんはそう言うと、ベッドから降りて、シャツのシワを伸ばす

『駄目ですよ! そんな不良みたいな事…ッ』

見つかったら停学…
いや退学になるかも知れない

強気に止めたつもりだった私だけど、ハァとつかれた溜め息にビクンと体が跳ねる

『お前のその「温室育ちです」って態度が気に入らねぇんだよ』
『…ッ…』

怒らせてしまった…
初めて見る彼の冷たい目に鳥肌が立つ

『一緒に来いよ』

だがすぐにいつもの優しい笑みを見せた

不思議…
やっぱり嫌いになれない


言われるよう、ゆっくりと体を起こしベッドから降りようとする

その時…
普段、細い垂れ目の真中くんの目が真ん丸のお月様のように開いた

うん?
何を驚いて…

『悪い… パンツくらい履いて…』
『え…?』

わけが解らず自分の足元を見る
するとピンク色の布がシュシュのように丸まって床に落ちているのが見えた

これは…パ…ッ

『パンツ―――?!!!」

あまりの衝撃に私の拳は「何故か」真中くんの頬を叩いていた

もうお嫁に行けない…ッ