■妊娠?

『おっはよ♪ 洋っ!』

朝、教室に入ると上機嫌の和之が近づいてきた

『おはよ、相変わらずテンション高いねぇ…』

俺も笑顔で返す

不思議な事に記憶が無くなっても、和之だけは動じなかった

普通なら戸惑ったり、気を使いそうなものだが…
奴には関係ないらしい


『昨日のテレビ見た? 14歳で妊娠とかいうやつ!』
『何それ』
『すっげぇ感動すんだよね!』

やや興奮気味の和之
それから30分ほど熱烈に語られた



『洋は大丈夫かぁ?』
『何が?』
『妊娠! 相模とやる事やってんだろ?』

和之はそう言って意地悪に笑う

『あー…』

【妊娠したらどうするんですか?】

あいつも最初、そんな事言ってたっけ…
確かにゴム着けてないからなぁ…

『…大丈夫じゃない? 中に出してないから』
『いい加減だな、最近の洋…』

苦笑する和之に俺もつい苦笑してしまった


心当たりが無いといえば嘘になる

しかし妊娠したならツワリがくるだろう

奈穂は元気そうだし…
まさか…な…


フゥと息を吐いたその時、廊下側の窓から奈穂と理香が顔を出した

『おはよう、洋! 和之くん!』

理香は笑顔で手を振る

『おはよ♪ あれ? 相模、顔色が悪くない?』

奈穂を指差して言う和之

『そうですか?』
『うん。 ちゃんと食べてる?』
『食べてますよ! そんなに心配しないでください!』

笑顔で応える奈穂は、確かに顔色が悪い
そういえば今朝も体調が悪そうだった

『…』

まさかね…
俺は不安を隠すように、机に伏せて目を閉じた