■嫉妬
○Side 奈穂

次の日、さっそく理香に昨晩の事を説明した

『うん… 奈穂が幸せならいいんだ…』
『私は大丈夫! 前と違って今の洋は彼女いないから…』

最初に比べればマシになった方
あの時は綾先輩という彼女もいたし、私との事もただの遊びだった…

『「嫌いじゃない」って言われただけで嬉しいの…』

それだけで報われる
優しくしてくれるだけで…



私と理香が話していると、後ろから大きな手が目を覆い視界を奪った

こんな悪戯するのは…

『洋?!』

洋しかいないと、笑顔で振り返る

しかし目に映ったのは…

『ま…牧原くん…?』

牧原くんだった

『相模、今日も一緒に帰ろうよ♪』

牧原くんは満面の笑みを見せると、私の手を握る

『牧原くんッ…あの『おごるから何か食べて行こう!』

こちらの話も聞かずズンズンと進む牧原くんに理香は唖然としていた


そのまま廊下を引っ張られるように1組の前を通る

『牧原くんッ 私…!』

断らなくちゃ…
そう思ったその時だった

フワリと甘い香りに抱き寄せられたのは…

『悪いけど… こいつ俺の女だから』

聞き慣れた甘い声が耳元で響く

『洋…』

予想もしなかった事に上手く頭が回らない

『真中ッ 相模とは別れたんだろ?!』

牧原くんは洋を指差しながら、それでも私の手を離さなかった

『別れた覚えはないけど? 昨日も奈穂は家に泊まったし』

勝ち誇ったように笑う洋に、顔が熱くなる

『相模… 真中の言う事って本当?』
『ほ…本当です…』

でも何も、こんな所で言わなくても…





『何であんな事言うの?!』

牧原くんが去った後で、怒鳴り付ける
すると洋は不機嫌そうに答えた

『あんたと手繋いでるのが気に入らなかったから』
『…へ?』

思いがけない返答についつい目が点になってしまう

『それって…嫉妬…?』
『さぁね』
『さ、さぁって…』

苦笑する私の手を握り直し、背を向ける洋

『あんたは… 奈穂は俺以外に媚びなくていいんだよ』
『洋…』

それって…
「俺以外を好きになるな」
そう解釈してもいいんだよね…?