■始動

今まで罪は自分で償ってきた
黙って殴られた事もあったし、重傷を負った事もある

だから綾も納得するまで殴ってくれてよかったのに…


『ハイ、あーんして♪』

真っ青な空の下、綾はフォークに刺した玉子焼を差し出した

『…恥ず…』
『いーの! せっかく綾が作ってきたんだから!』

綾はプゥと頬を膨らませ、フォークをさらに近付ける
俺は仕方なく溜め息混じりにそれを食べた

「腫れ物に触る」
それはこんな気持ちなのだろうか…

奈穂の動画がある以上、こちらも下手に扱えない






『おっかえりー♪ 見えてたよ、屋上!』

屋上から教室に戻ると、和之がそう言ってからかった

『そんな事より、そっちはどう? 2人組は見つかった?』

俺はまたもや溜め息をつき席に着く

『まぁ、ボチボチですな』

和之には1つお願いをしてある

それは奈穂を襲った2人組を見つけだす事
恐らく綾の知り合いで3年生だと思うが、卒業と同時に逃げ切られては困る

『男ならきちんと責任は果たしてほしいよな、和之…』
『ねー♪』

ニッと笑う和之に俺も笑顔を見せた


一時の裏切り
奈穂はどう思ってるだろう

泣いてないかな…

でも材料が全て揃ったら、必ず奈穂の所に戻るから…
少し待ってて…?