■心当たり

ごめん
ごめんな?
何度、謝っても気は晴れない

俺のせいで奈穂が傷付いたという事実は消えない



『洋…く…ムニャムニャ…』

眠りながらもしっかりと俺の手を握る奈穂
俺はそんな奈穂の手にそっとキスをする

《~♪~♪》

そんな時、どこからか静かな音楽が聞こえた

音の発信元は奈穂のポケットの携帯…
直樹からの着信だ

『…』

しばらく考えた後、俺は電話をとった

《姉ちゃん? 今どこ?》
『…悪い… 今は電話出れないみたい』
《え? 真中さん?》

直樹は驚いたような声を上げる

『うん… 悪いけど姉ちゃん、迎えにきてくれる?』

直樹は一瞬、戸惑いを見せた後で快く引き受けてくれた


しばらくして直樹は倉庫に現れる

『呼び出してごめんね?』
『いえ… 姉ちゃん何かあったんですか?』
『貧血…かな 俺、事情があって送ってやれないから…』

直樹は何か聞きたそうに口を開いたが止めて、とりあえず奈穂を背中に背負う

『あと、奈穂に伝えてほしいんだけど…』
『はい』
『「少し距離おこう」って…』
『え…?』

直樹が顔を上げたと同時、俺は笑顔で手を振った

何も聞くなと言わんばかりに…





あの男が持っていたピンク色の携帯…
あんな可愛いの男が持ってるわけがない

それにあの機種であの色の携帯を持った人物
俺は1人だけ知っている

《ピッ…プルルル》

直樹の姿が完全になくなった事を確認し、俺は思い当たる人物に電話する

《もしもーし!》
『洋だけど、さっきの返事いい? 綾ちゃんとヨリ戻したいんだけどさ…』


俺は奈穂を無くせない
奈穂を傷つける奴は誰だって容赦しない

それが例え、女でも…