■溢れ出す欲望
○Side奈穂

『ほら、気持ちいいだろ?』

人間はなんて虚しい生き物なんだろう

愛する人がいて、忠誠を誓ったとしても
体は関係無しに快楽を求める

薬のせいだと言い訳しても、貴方は許してくれないかな…

洋くん…
ごめんなさい…



薄れる意識の中、それだけを思う…

『ほら、太いのやるからッ 股開いとけよ!』

そう言って男がズボンから一物を取り出した瞬間、クンッと後ろにひっくり返った

え……?

私の手を拘束していた男が青ざめた顔で口を開く

まさか…

『まッ 真中…洋?!』

予想は当たり、私の足元には笑顔の洋くんが立っていた
しかし決して目は笑っていない

『お宅ら面白い遊びしてんねぇ?』

多分…
今までにこれほど怒った洋くんを見た事ないだろう

あまりの威圧感に私まで足が震える

『おッ おい、行くぞ!』
『てめぇ…ッ』

逃げていく男達を追いかけようと足を出す洋くん
私はそんな洋くんを止めた

『…わないで…ッ』

お願い…

『嫌わ…ないでください…ッ…』

貴方に嫌われたら私…

『ごめん… ごめんね…』

洋くんは何度も謝り、私を強く抱きしめた

その瞬間、下半身が熱く疼き始める

『洋く…ッ 私、置いて帰って…?』

見せたくない
薬のせいとはいえ、こんな汚らわしい姿…

『奈穂…? また熱あんのか?』
『ん…ッ』

掌が頬に触れ、指が耳に触れる
それだけで体に甘く痺れが走る

『まさか… 何か食わされた?!』
『…ッ もう帰ってよ…ぉ!』

満たされたい欲望が溢れ、涙が出る
これ以上、惨めにさせないで…

『大丈夫… どんな姿でも俺は好きだから…』

それは本当?
我慢しなくていいの…?

『わ…たしッ…洋くんとしたい…ッ!』

本当に嫌わない…?