■親の愛情

時刻は夜の11時
本来の高校生なら今頃、夢の中だ

『お父さん… 帰っちゃ駄目ですか…?』

俺は機嫌を伺うように下から覗き込んだ

『ここに住めばいいじゃないかぁ~!』
『そ、それは…』

前回でわかったが奈穂の父親は酒癖が悪い
だから早く帰りたかったのに…

ハァと溜め息をついた時、玄関の方から誰かが入ってきた
あの顔は…

『こら、直樹!!』

お父さんはスクッと立ち上がり玄関の直樹を引きずって部屋の中に投げた

お…
親子喧嘩は他でやってください…

『こんな遅くまで何をしてた?! 少しは奈穂を見習いなさい!!』
『うるせーなぁ… 女の家だよ、女の』

反抗する直樹と怒鳴るお父さん
何となく俺まで姿勢を正してしまった

『洋くんも直樹にガツンと言ってやってくれ!』
『…』

直樹の女遊びにガツンってか?
言えねーよ、俺が…



しばらく喧嘩は続き、12時になると父親は疲れ果て眠ってしまった

静かな部屋の中、先に口を開いたのは直樹

『変なとこ見せてすいません… 笑っちゃいますよね』

あ…
やっぱ奈穂に似てる

笑い方とか…

『別に笑わないけど』
『うちの姉ちゃんすぐに病気するから親も大事にしすぎてるんですよ』
『…』
『俺なんて丈夫だから全然見てもらえなくて、たまにした夜遊びで怒鳴られちゃって』

見てもらえない…か…

『見てもらってんじゃん、あんた…』
『え…?』
『さっきのも怒られたんじゃなくて、叱られたんだろ? 愛情だよ』

直樹は今にも泣き出しそうな顔で俺を見る

やめてくれよ…
俺、あんたら2人のその顔に弱いんだから…

『それに愛情が無かったら大金渡して「遊んでこい」って言うさ、うちの親父はそうだからね…』

息子が何をしても無関係なふり

『奈穂を甘やかしてるってより奈穂に叱る分が、直樹にいってんじゃねぇ?』

俺はそう言ってビールを開ける
するとそのビールを直樹はすっと受け取った

『親を心配させすぎんなよ…』

明日は日曜日…
やっと「お母さん」に会える

【…その2つが解ったら会いにおいで】

約束を守る日がようやく訪れたね?