■会わせたい人

最初は人に愛されたくて
愛されてるって実感したくて女を抱いた

抱く度に寂しさは募り、それを紛らわすために今度は数を増やしていった

繋がってる間だけ満たされ
離れた瞬間に悲しくなる


最後に残ったのは何だった?

最後に残ったのは…
「愛されたい、愛されたい」と悲鳴をあげる自分だった

愛してあげる事も知らない自分だけが残った




『…最後に何て言ったんですか?』

「どうせ馬鹿にされたんだろうけど」と口を尖らせて言う奈穂

『さぁ? 忘れちゃった』

俺は奈穂を抱き寄せ、そう答える
すると奈穂は今度は頬を膨らませた

忘れるわけがない
初めて言ったんだよ?

【愛してる】って…


『もういーです~… どうせ馬鹿にしたんでしょ!』
『開き直るなって!』

自分でも驚いている
まさかここまで人に溺れるとは…

でもね、すごく楽しい



「愛する事、愛される事」
それが解ったら会いにいく約束だったね

『奈穂は明日の日曜って暇?』
『えと…大丈夫です!』

まだ1つだけど、会いにいっていいかな…?

『んじゃさ、奈穂を会わせたい人がいんだけど…』
『誰…ですか?』
『俺の母親』
『………えッ?!』

俺の言葉に奈穂は声を上げ固まった

『会いたくない?』
『…行きます!』

少し無理をしているんだろう
奈穂は何かを決意したように力を込めて返事した


お母さん…
やっと約束を果たせるね…