朱月先輩は美形。

整った顔で、笑う。


「いや、桜嘉ちゃんと十六夜聖。どちらが兎で、どちらが烏なんだろうなと疑問に思っただけだよ。」


先輩はそう言って、私の横をすり抜ける。

“兎”と“烏”

どうして、今は語り継がれなくなったその話を先輩が知っているのか。

ぼーっとそのまま突っ立っていた私に、知る由も無い。


暫くすると百合ちゃんがこっちに帰ってきた。


「…大丈夫?」

「うん、平気。」

「なら良いんだけど…。」


こんなに警戒心が強い百合ちゃんを見るのは初めて。