「え…あぁ、君の母親の…野宮静子さんだ」

一瞬、張り詰めていた雪子の頬が緩んだが、やがて「そうですか」とちいさく呟いた。


僕は雪子より少し前に、彼女の手首に付けた手錠に繋がるロープを手に持って歩いた。薄暗い廊下に、僕と雪子の足音だけが響く。正直、緊張で胸が張り裂けそうだった。



「面会時間は15分だからな」


そういうと、僕は突き当たりのドアを開け、彼女の手錠を外した。

雪子は何も言わずに、薄い透明の板一枚向こう側で座る母を見つめた。



「お母さん…」


雪子の母は、雪子より少しぽっちゃりした体型で、茶色い紙を肩までのばし、
顔は、雪子そのものに皺が入ったようだった。


母は、神妙な面持ちで静かに雪子を睨んだ。


「どうして…」



やがて、母は涙を流し始めた。