「え…」
女の子は俺を覚えていない…正しくはさっきのが俺だと分かっていなかったらしく、きょとんとしている。

まぁ、そんなことはどうでもいいんだが。


「俺は身投げするつもりで地面を見ていたわけじゃない。そこらの死にたがりと一緒にするな。」
「そ、そっか。」
女の子は自分の勘違いだったことに、申し訳なく感じながらも安堵しているように見えた。


なんなんだこいつは。

さっきまで泣いていたくせに。

人の心配なんかして。


俺が疑問を抱きだして、モヤモヤし始めてから、女の子は口を開いた。
「勘違いしてこんなことして、ごめんなさい。てっきり自殺するのかと思って…。ここってよく生徒が身投げするじゃない…?」
女の子は俯きだしてしまった。

俺は思った。
こいつは、俺のために俺を助けたんじゃない。
こいつは、こいつ自身のために俺を助けたんだ。

きっと今までに、死にたがり自殺祈願者が死ぬのを見たのだろう。

人の死を恐れてるんだ。