「あ、説教みたいになっちゃったよね。ごめ…」
「お前はこの世は得るものと失うもの、どっちが多いと思う?」
俺の急な質問に戸惑う女の子。
そりゃそうだ。
今会ったばっかりの、助けてやった奴に、この世について問われているのだから。
俺はこいつに何を求めているのだろう。
共感してほしい?
どう答えてほしいんだろう。
俺は戸惑う女の子を置いて屋上を後にした。
もう会うことはないだろう。
名前も知らない。
たまたま今日会っただけの、ただの他人同士なのだから。
廊下を歩きながら思う。
またどうでもいいことを他人に尋ねてしまった。