しかしそこはセリアも並みの傭兵ではない。いつの間にか自分にも素早さを上げる魔法をかけていた。
その結果、セイレーンが障壁を壊す際に一瞬止まった隙に離脱動作をおこし、寸前でかわす事ができたのである。

ようやく並んだ2人。この一瞬でかなりボロボロになっていた。

「しっかし、見た目に反して強いなぁ〜。やっぱり魔族はハンパないや。」

「弱音吐かないの。それより、この後どうするの?これ以上の強攻撃仕掛けても多分ダメージ与えられないよ。」

「だよなぁ〜。でも時間は稼がないと。」

目立たない場初で何かしているリーナの為にもどうにかしないと…。
そんな事を考えていたら、攻撃をかわされたセイレーンは少しイラつきながらこちらを睨みつけてきた。

「なかなかやってくれるじゃない。次は外さないわよ。」

そう言うとそっと右手を突き出して、軽く自分の前を払う動作をした。
その瞬間、デイルとセリアは衝撃波を受けて後方へ飛ばされたのである。

「ぐはっ!」

「きゃ〜!」

ゴロゴロと転がる2人。そして転がり終えた後に顔を上げて愕然とした。2人が立っていた場所の前に大きな亀裂が生まれていたのである。
それは言わずもがな、先ほどのセイレーンが放った衝撃波で出来たものである。

「このままじゃ時間稼ぐ前にやられちゃうよ。どうするデイル?」

「神の保護をかけて、あれをやってみよう。」

デイルの発言に難色を示すセリア。

「言っても無駄でしょうけど、あえて言うわよ。今の武器だと耐えられないわよ。デイル、あなたも…。」

そう言いながらセリアはデイルの持つ武器に「神の保護」をかけていた。これで普通の魔物ならかなりのダメージを与えられる。

「それでこそ、白き魔女と恐れられるセリアだよ。」

「それは言わない約束でしょ。」
切れ長な鋭いセリアの目がデイルを睨む。それを見てゴメンと頭を下げるデイル。
それを見たセリアはニコリとしていた。そしてデイルも。
この二人の信頼関係がどれだけ深いか判るやりとりである。