少し落ち着いたリーナは、先程までみせていた少女からいつもの少女に戻り、サリトの森の本当の入り方を語り始めた。
それは単純でもありまた、謎でもあった。

「私が中まで案内します。」

リーナの回答である。
デイル達は皆「どうやって?」と傾げ、「案内?」に悩んだ。

「では、行きますよ。よろしいですか?」

皆の疑問をよそにリーナは初めて詠唱を始めた。しかし、その詠唱は初めて聞くものであった。完全にお手上げのデイルはふと何やらぶつぶつと言う声が聞こえたのでそちらに視線を移すと、そこには引きつった顔をして頭を小さく左右に振るセリアの姿があった。
様子があまりにもおかしかったのでセリアの方に寄ろうとした時と、詠唱を終えたリーナのかけ声が重なった。

「テレポート!」

その瞬間、眩い光にのまれたかと思うと次の瞬間には全員が漆黒の闇に包まれた森の中にいた。空に浮かぶ月明かりこそあるが、生い茂る森の木々によってその光は遮られ、正に闇そのものであった。そしてリーナはゆっくりとこちらにむき直すとこう告げた。

「ようこそ。私の森サリトへ。」

そこには先程までいた少女の面影はなく、黒かった瞳のはずが左目だけ金色に輝いて、こちらを眺めていた。