私、松代紗登実(まつよさとみ)は、この日もいつもと変わらない始まりだった。
いつもと同じように目が覚めて、顔を洗い、歯を磨いて化粧をし、髪をまとめる。
そして車に乗り、会社に出勤。
始業時間まで、休憩室で煙草を吸い、事務所に向かった。
事務所に向かうと、来客用の駐車場に白いステーションワゴンが停まっていた。
(来客？)
そう思い、面談室を覗くと、１人の男が座っていた。
年齢は、私と同じ２５歳くらい。
ぱっちり二重の可愛い目が印象的だった。
彼が私に気付いて、頭を下げた。
私も軽く頭を下げ、事務所に入った。
「おはようございます。勝亦さん、面談室にいる人誰ですか？」
私は、同じ総務課で働く勝亦博美さんに聞いた。
勝亦さんは、年齢が３８歳。バツ１で今は２人目の元夫との間に出来た子供の菜々ちゃんと両親の４人で暮らしている。
私の悩みを聞いてくれる社内での１番の理解者だ。
その勝亦さんが、不機嫌そうに私に言った。
「現場に請負会社入れるって話あったじゃん？その会社の管理の人。先に現場に入って作業覚えて、派遣で入ってきた人に仕事を教えるんだって。」
「へぇ。そうなんだ。っていうか、今日からなんて聞いてないです。」
「でしょ？私も聞いてないよ。さっき急にだよ。勝亦さん、案内してやって。って言われて！だから、とりあえず朝礼あるし面談室で待っててもらってるんだけど。」
そう言って勝亦さんは面談室の方を見た。
私は、総務課長席を見ながら、
「結局、相手をするのは私達なんだから前もって言ってもらいたいですよね。じゃあ、食堂の席表に追加しますね。」
と囁いて、自分のデスクに向かった瞬間、就業の鐘が鳴った。