二人が親密になるのに、時間はかからなかった。そして、二人は、お互いを励みにしながら、それぞれの夢に向かって歩みを進めた。魅麗は、熱心に経営の勉強をした。怜樹は、画家になる夢を実現するため、毎日毎日、画家になった自分を想像し、思い描きながら、絵を描き続けた。休息時間には、二人は一緒に過ごした。そして、パリの街に出ては、二人は一緒に色々な所へ行き、魅麗は胸を高鳴らせて色々なものを目にし、知識は自然と増えていった。怜樹は、新しい絵の道具や資料を発見すると、早速買い、そして、魅麗に自分の夢を子どもの様に目を輝かせて、夢中になって熱く語った。『世界中何処へでも行くよ。世の中には、貧しい国もあるだろ。絵で人の人生を救えるとか思ってない。そんな大きな事は言えない。ただ…綺麗なものを見ると、良い気持ちになるだろ?清らかな気持ちになるだろ?僕に何ができるかわからないけど、たかが僕の絵で、希望を持ってくれたり、綺麗と思って心を明るくしてくれたら、嬉しい…』と。怜樹が、あまりにも清んだ目をして言うので、魅麗は、絶対に叶えてほしいと思った。怜樹は、とても綺麗な色彩を出す。パリへ来た日、凱旋門の路地裏で、一際目立つ怜樹に目を奪われ、洗練された雰囲気を持つ彼が描いていた絵を見た時の、あの吸い込まれそうになった日の事を、魅麗は、今でも忘れられない。これは、彼にしかない才能だと魅麗は、思っていたので、絶対に実現してほしいと思った。そして、彼は、唯一の画家になるべくして生まれてきたのだ、絵で人々を救うのは彼にしかできない使命なのだと心から信じていたので、今のその清んだ瞳を、決して失ってほしくないと、魅麗は、強く思った。
『もし、これから先、彼の瞳の輝きが、濁されてしまう事があるかもしれない…。そんな彼なんて想像できない。私が、彼を守ろう』
魅麗は、自然と、そう思う様になっていたのだった。