魅麗は、怜樹の自分を見つめる視線に気付かないまま、店内に目を奪われながら言った。
「そう、良かった」
怜樹は安心しながら、メニューを広げる。
「わぁ…アレ可愛い…」
魅麗は、何かに見とれて呟いた。視線を辿ると、その先に、キノコ模様の小さいなテーブルと椅子が置いてあった。子ども用なのだろうか。
「ああいうの好きなの?」
「あ…、うん。…子ども地味てるかな…」
魅麗は、ちょっと恥ずかしくなった。
「ううん」
魅麗の可愛らしい面を見れた様で、怜樹は、なんだか快い気分になり、魅麗の事を、もっと知りたいと思った。怜樹は、頬杖をつきながら、魅麗を見つめた。魅麗は、それに気付かない様子で、店内を見渡している。薄灯に浮かぶ魅麗の横顔。その横顔に、怜樹は、心を揺さぶられた。怜樹の好きな顔立ちだった。
「そんな好きなの?」
怜樹は、そっと、魅麗に尋ねた。
「うん…大好き」
魅麗は、怜樹の方を見て、語った。
「私ね、こういう、大好きなものに囲まれた自分の店を出したいという夢があって、それで、勉強しようと思って、パリに来たの」
魅麗は、目を輝かせてそう言うと、また、店中に飾られた綺麗な置物に目を移した。怜樹は、魅麗の話を聞いて、夢を持っている自分と重ね合わせた。そして、凄く共感した。魅麗の表情、いや、魅麗自身に、怜樹は、心を奪われて、思わず呟いた。
「僕の事は?…」
「……え?」
魅麗は、驚き気味に怜樹を見た。
「やっとこっちを見てくれたね。はい、何にする?」
怜樹は、何もない顔をして尋ねる。そんな怜樹の様子に、魅麗は戸惑いながらも、聞き返す事ができないまま、メニューに目を落とした。魅麗を察し、怜樹は、
「冗談だよ…気にしないで…」
とそっと微笑んだ。