「どこにいるんだろう」
怜樹は、階段を降りた所で、それぞれの部屋の扉を見渡した。
「こう見ると多いなぁ」
部屋の扉を見渡しながら呟く。
ふと、キッチンの方から音がしている事に気付いた。
怜樹は、キッチンの部屋へ歩み寄り、ドアを開けた。
「いた!何してるの?」
怜樹の声に気付き、魅麗は振り向いた。
「あ、起きた?お腹すいたでしょ?すぐに出来るから、座って待ってて」
「はーい」
怜樹は、嬉しそうに返事をしながら、椅子に座った。
だんだんといい匂いがしてきた。
魅麗は、料理を素早くお皿に盛り付けた。
「はい、どうぞ」
「わぁ~パスタだ!感激だなぁ~魅麗が作ってくれたなんて」
「お口に合いますか、わかりませんが」
「美味しそう!いただきます」
「ハイ」
怜樹は、パクリと一口食べた。魅麗は、ドキドキしながら伺う。
「美味しい!」
怜樹は、満面の笑顔をしながら言った。
「良かったぁ」
魅麗は、安堵の胸を撫でおろした。
食事の時間が、快く流れていく。
「あ、そうだ」
魅麗は、ふと思い出し、怜樹に言った。
「食器とか食材とか、お店みたいに揃ってるね。びっくりしちゃった」
「あぁ、見たことない器具とかあったでしょ」
「うん」
「シャフがいるんだ」
「えっ?」
魅麗は、目を丸くした。冗談に想像していただけだったので、かなりびっくりだった。
「シャフ?」
「うん」
「どういう事?」
「ウチの専属シャフ」
「へぇー……」
魅麗は、もっと聞きたいとも思ったが、言葉につまり、とりあえずパスタを口に運んだ。
「親父が凄いんだよ。一代で会社を築いた」
怜樹は、魅麗に語り始めた。
「何事も努力の人なんだ。凄く尊敬してる。僕、一人っ子なんだ。凄く可愛がられてる。専属シャフは、フランスでひとり頑張る親父からのプレゼントなんだ」
「へぇーそうなんだ」
「魅麗の事も聞かせてよ」
「私のこと?」
「うん。家族とか兄弟とか」
「私の家族はねぇ~」

二人は、初めて、お互いのことを話した。
たくさんたくさん話した。